悶々とする日々
最近、メトロの中の宣伝ポスターで、エッフェル塔が銃になっているデザインのものがあって、それを見ては「なーんか嫌な感じがする」
そう、思っていた。そしてその勘は当たったのだった。
食後にインターネットを見ていた旦那さんが急に、テロリストだと叫んで、テレビをつけて夫婦2人、唖然とする。
サッカー中のスタッド・ドゥ・フランスで、爆弾?旦那さんの職場の真ん前やん。バタクラン劇場ってどこだ?そして・・・複数の場所?
テレビではいまいちわからないし、旦那さんは酷く興奮していて、旨く説明してくれない。インターネットで検索して行くうち、大体の場所が見えて来た。パリの北東の方だ。
私が働いているのは、どっちかというと南西の方である。夜の営業は金曜日なら23時まで及ぶ事もあるので、同量の顔が浮かんだが、離れているので少し安心した。
テレビでは死傷者の数が時間を追うごとに上がって行ってる。義兄や離れた友人から電話が鳴り続ける。旦那さんはそわそわし、打ち拉がれた表情をしている。
こういう時、本当に日本人の私と、彼とのナショナリズムというか愛国における精神は違うなあと感じる。うまく言えないのだが、フランス人の多くはこういう時、同胞である国民が非情な思いをすることを、フランス人として、とても辛く感じるようだ。私は、日本人が辛い思いをしていると知ったら、もちろん悲しいのだが、旦那さんやフランス人のそれとは少し違うように思える。
ため息を吐きながら、寝る為に寝室へいき、一人考える。ああ、1月から1年も待たず、こんなに早く又、テロの対象となってしまった・・・。これからこの国で生きていってもよいものだろうか。
その夜も(カノママさんから)、次の朝も日本の友人からメールがあってびっくりした。
そしてFACEBOOKには、パリやパリ近郊に住む人たち用に「私は生きながらえています」ことを、皆にわかってもらえるような安否確認の頁まで出来ていたので、急いでクリックしておいた。
東日本大震災の時も私は東京で働いていたのだが、あの時も渋谷で何時間もバスを待ちながら、インターネットで、自分の身の安全を皆に伝えたっけ。あれから4年しか経っていないのにまた私は、危ない場所に身を置いているのだな。それでも生きている不思議。
朝には旦那さんが、実家(フランス領レユニオン島)の義母に「大丈夫だよ」と電話したのだが、お年のせいかいまいち分かっていない様子。しかし一度電話を切ったら、その後電話が鳴って、テレビのニュースを見て、状況がよくわかって、怖くなって泣き叫んでいる義母だったらしい。状況を改めて説明するとわかってくれたのだが、義母もお一人だし、私達は日本⇄フランス位、離れているから、やりきれない気持ち。
土曜日は空手の稽古があるのだが、フランスは国境閉鎖し、オランド大統領により、緊急事態宣言、全ての公共機関は閉鎖。
なのに旦那さんは「空手の子ども達が来たらかわいそうだから、道場へ行って来る」と出て行ってしまった。うちからパリは遠いので、テロが飛び火することはないとわかっていても、一人で家で待つのは少し怖かった。
結局、大阪の母に電話をすると、ママンはその日は夜遅く帰っていて、パリのニュースも私が電話する2時間位前に知ったばかりだと聞いてほっとした。2人で日仏政府への悪口を言いまくる。ママンとは政治への考え方が似ているので、嬉しいと思っている。
それから旦那さんが帰って来て、その後一人でスーパーに買物に行くと、財布を忘れていたので、もう一度帰って行き直す。
スーパーは土曜日のせいなのか、テロのせいなのか、すごく人がいて、又地震の後にことを思い出していた。あの時は「地震の後に食べ物を買い占めるなんてナンセンス」みたいな意見があったが、なんかあったら皆こういう気分になるんだなあ・・・そんなことを考えながら、長い行列に並んだ。
政府から、何か特別な事がない限り、外出禁止!という命令が出たり、旦那さんが咳と鼻水にやられている週末だったので、結局その後は家にいた。テロがなければレストランに行くはずだった。こういうことまでISとやらは阻害するのか、と思ったりした。
FACEBOOKのキャンペーンで、プロフィール写真をトリコロールカラーにして、パリの人たちへ祈りを捧げましょうというのがあって、何人かがそれに変えていた。私は一瞬変えようかと思ったのだが、なぜか酷く嫌な気分になってやめた。現地に住む人間にとって、「キャンペーン」という軽々しい瞑目で、そんなお手軽に哀悼して欲しくないという気分があったからかもしれない。
メトロやバス、道で出会ったこともあるだろう誰かが、そのテロで消えてしまった、ということがただただ、悲しかった。知ってる人はいなかったのだけど、それでも私の日常の一部は、確実に壊された、と思った。
インターネットで色んな事を知るにつれ、複雑な気分になっていく。私はその1日前にレバノンで200人がテロでなくなった事を知らなかったし、シリアでは16万人も亡くなっているということ、それもフランス軍が爆撃しているってことを、改めて知った。
皆がリラックスして、楽しんでいるパリの金曜日の夜に、テロを仕掛けるような人の心の闇はとことん深いのだな・・・それは私が知らないといけないのに知らない、世の中のことを反映しているのだ。痛切に感じた。
そして今朝、フランス軍、またシリアを爆撃・・・。
フランスでは、この爆撃について、政治家達がもちろん賛否両論しているそうだが、オランドさん、なんか用意周到しすぎやしないか?
9.11からテロが増えたってことを鑑みても、報復、テロ、の連鎖って・・・もう何もいわずとも今のフランスが結果じゃないですか・・・。
ちょっと私ごとで、良いことがあったのに、このせいで、すごくやりきれない週末と月曜日だった。
by baillement27
| 2015-11-17 01:47
| いつもの日々
ささいなことかもしれないけれども
by バイエ
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