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知人、パリに来る

 最近こちらで知り合った、私より10才くらい上の素敵な女性に、彼女が主催するコンサートに誘われた。
 それはパリの横にあるナンテールと言う街の音楽ホールで行われるらしいのだが、出演者の名前を聞いて、飛び上がる程驚く。

 楽器を大阪で習っていた頃、私の師匠は、大阪中崎町のとあるカフェで、月に何回かライブをしていた。私はそのライブに足しげく通った。そのカフェは古民家をリノベーションして、ほの暗い店内はどこか懐かしく、心が落ち着くのだった。
 そのカフェはスタッフを募集していたので、私は何度かそこで働いた。一緒に働いていた男性は「くまさん」と呼ばれていて、見た目が名前のとおりで、優しく誰からも好かれていた。彼は私に「君はこの仕事向いてるよ」と言ってくれたのだが、その先、仕事のことでそんな風に私に言ってくれた人を誰も知らない。
 カフェでは色んな催しを行っており、整体教室などもあった。私はカフェで働かなくなった後も、そこで野口整体をやっている先生に出会い、病気がちであったが、施術のおかげで身体は劇的に快方に向かったのを器に、整体や武道に興味を持ち始めた。そしてもっと造詣を深めたいと思い、37才で東京に単身で上京し、武道や整体を習っていたのだが、なぜか、空手道場でフランス人に出会い、今に至る(苦笑)。
 そのカフェの男性オーナーはダンサーで、大変に見目麗しく、そして眼光鋭く、独特のオーラが燦々としていて、きれいな女性とよくカフェで打ち合わせしており、私など話しかけられるような人物ではないと、一度も話した事はなかった。
 だけど運命ってとっても不思議なのですね。そのオーナーがダンサーとして、昨晩のコンサートに来ると知ったのである!

 今週は仕事が毎日あって、どろどろに疲れていて、酷い顔だったけど、私はどうしてもオーナーに会いたいと思った。
 だって今の私があるのは、あのカフェのおかげなのだから!こう書くと大げさなんだけど、(別に何も成功してないし)今まで割と自分のやりたいようにやって来たことの始まりは、あのカフェだったと強く思っています。そのお礼を言わなくては。

 ナンテールに行くには、RERという電車に乗るのだが、一人で乗るのは、初めてだった。少しドキドキしたが、当たり前だけど、乗ってみると全く普通の電車だった。ああ、又一つ自由になれた感じがして嬉しくなった。パリ郊外で行ってみたい所は一杯あるから。
 コンサートは音・舞・書という題名で、その名のとおり、ミュージシャンの方と書道の方もいて、それらが統合された少し前衛的な舞台だった。
知人、パリに来る_b0350090_21151895.jpg
 会場にはお客さんで埋め尽くされ、終わった後の質問コーナーでは、大人から子どもまで、様々な質問が飛び交った。フランス人は本当に芸術が好きな人たちだ。

 終わった後、どきどきしてダンサーの彼に声をかけた。私の紹介をすると、(もちろん覚えていなかったが)ものすごく喜んで下さった。そしてあのカフェがあることで、私のように恩恵を受けた人が今、沢山増えている、と仰った。
「くまさんが亡くなったのを知ってるか?」と聞かれ、私はうなづく。それを知った時の悲しい気持ちがよみがえってくるのを感じながら。

 打ち上げに行こう!と近くのレストランに行った。音楽家の方は山梨在住で、私も学生時代山梨県で働いていたから、また偶然に、2人が知ってる人が1人いてびっくりした。
 私が前に働いていたカフェは、いま、ネパールの支援を行っているらしい。高山に住んでいる民族がいて、そこは過酷な環境で支援の手すら、届かないらしく、3500人の命が危ぶまれている。オーナーがそこに一人で行って、ダウンジャケットやテントを届けるのだそうだ。
 このヨーロッパツアーは、先月の末から始まって、スイスでやったり、パリではテロの孤児の支援もしたのだそうだ・・・。知っていたら何かお手伝い出来たのに。
 明日からドイツに行ってそこでこのツアーは終わるらしい。
 
 オーナーと熱く語っていたのに、私の携帯が鳴った。旦那さんが甥っ子を空港に迎えに行っていたのだが、どうやら2人は無事に出会い、その後、私も迎えに来てくれたらしい・・・。
 今年最大の残念だったけれど、今は人妻やから仕方ないよね。皆に旦那さんが迎えに来たからと席を立った。
 オーナーが出口まで送ってくれた。
「これからもフランスに来ますか?」
 聞けば震災前までは沢山来ていたのだそうで、またこちらに来る事を再開してくれるそうだ。
 最近のフランスの動きなどを見ると、あまりフランスに住む事を希望と思えないなどと言うと、でも私が今ここにいるのは何かの使命だよ、と言い、オーナーはフランスにも、自分が持っている知識を伝えて、平和な世の中を作っていきたいと言ってくれた。

 旦那さんが待つ場所まで、こみ上げて来る感情を、抑えながら歩いた。同時に、ここ数年で私が確実に失っている物にも、オーナーと話しながら気付いていた。それが何なのか、詳細にわかればいいのに・・・。

by baillement27 | 2015-12-12 22:07 | いつもの日々


ささいなことかもしれないけれども


by バイエ

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